活用事例⑤お母様の認知症に備えるため家族信託を活用する
状況
昨年夫を亡くしたEさんには2人のお子様がいます。
Eさんは、現在1人暮らしですが、最近体の調子が悪く、将来的には介護施設へ入所しようと考えています。
Eさんには、不動産、預金、国債などの多くの財産がありますが、介護施設へ入所した後、自分が自宅へ戻れない状況になった場合は、維持費がかかる自宅は、売却して、Eさんの介護費用や医療費にあててほしいと考えています。
そして、Eさんが亡くなった後は、葬儀費用などの経費を差し引いたのち、すべての財産を子どもたちで分けてもらいたいと考えています。
家族信託(民事信託)の設計
Eさんは、将来的に介護施設へ入所
自分が認知症になる前に自宅不動産の管理と売却を望んでいます。
Eさんを委託者、お子様を受託者、受益者をEさんとして信託の設計を行います。
Eが認知症になった場合は不動産や金銭の管理をお子様が行い、Eさんの生活費や介護費用に利用します。そして、Eさんが介護施設に入居し、戻れない状況になった場合は、お子様の判断で、自宅不動産を売却し、現金化することができます。
Eさんが亡くなった後には、財産を引き継ぎ売却して現金で分けることも契約の中に含めました。
家族信託(民事信託)を行うメリット
・認知症に備える方法には、任意後見制度や法定後見制度があります。これらは、本人の権利を守ることが目的のため、家庭裁判所による厳格な監督のもと後見人が財産管理を行う制度です。自宅不動産の売却には、家庭裁判所の許可が必要となります。Eさんのように多額の財産がある場合、司法書士や弁護士などが後見人となることが多く、ご家族が財産管理を継続することができなくなります。
一方、家族信託(民事信託)契約を結ぶことで、本人が認知症になる前から、認知症になった後も継続して、家族が財産管理を行うことができます。家庭裁判所の関与がないのが大きな違いです。元気なうちに家族信託(民事信託)契約を結ぶことで、認知症になったあとの自宅の売却も、委託者(本人)のために、受託者(家族)の判断で、実行でき、柔軟な財産管理が可能になります。